さよならさえ、嘘だというのなら

七瀬は驚き
半分泣きそうな顔をグッとこらえ、まだ俺を見つめる。

目をそらせば負け

そんな自分ルールを守ってる。

何に負けるんだよ。

「……悪い事って何だよ」

俺も自分を抑えよう
一回冷静にならねば

さっきより優しく七瀬に聞くと

「……しらない……」

涙声でそう答えて
俺達は互いにしばらくダンマリ状態。

沈黙が
スゲー心地悪いし

七瀬は何度か涙を指で払いながら、すがるような目で俺を見る。

「もう……いい?」

キリがない。
心地悪さに負けたのは俺。

切り上げてソワソワと逃げようとすると

「あの子が好きなの?」

急に言われて「あぁ?」って変な声を出して七瀬を見たら、七瀬は大きな目からボロボロと涙を流していた。

「颯大は須田凪子が好きなの?」

「なっ泣くなよ!」

どうしていいかわからない。
急に目の前でボロボロ泣かれたら、どうすりゃいいんだ?

きっと智和おじさんなら『抱きしめたら全て丸く収まる』とか言いそうだけど、絶対無理!
オロオロしてたら

「だから好きなの?」

七瀬はまっすぐ俺を見上げる。

昔からまっすぐな奴。

いつも一緒に遊んでた
兄妹のように遊んでた

話しやすくて
頼りになって
優しい幼なじみの女の子。

あまりにも近すぎる関係で、もちろん大好きな奴だけど


それは

恋ではない。

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