さよならさえ、嘘だというのなら
教室の扉の前で変な空気を作る俺と女子。
「別にイチャついてねーし」
「ちょっと可愛いとすぐこれだもんね。七瀬がかわいそう」
「だから、どうして七瀬が出てくんだよ」
「七瀬の気持ちわかってんでしょ。もう公認じゃん」
「勝手に決めんなよ」
「痛いって!」
俺の手に力が入ったのか
ヒステリックな高い声を出し、そいつは俺の手を振り払い俺を見上げる。
それこそ
幼稚園からの知り合いで
七瀬とも仲の良い
サッパリした頭のいいヤツで、俺とも仲が良かったのに
今はガンガン俺を責める。
「颯大、変わった」
「はぁあ?」
「颯大はもっと優しくて平和でいいヤツだったのに、最近変だよ」
「どこが?」
「浮かれてる」
ズバリ言われて言葉に詰まる。
そう……かもしれない。
「ごめん」
素直に謝ると
相手も苦い顔をした。
「私も言いすぎた。ゴメン。でもさ……夏休み明けてからちょっと変だから。ううん、颯大だけが変じゃないの、何となく……こう……前と違ってる」
「理由は?」
「わからない」
こいつのカンは鋭い。
「颯大ってさ……けっこー人気あんだよね」
「ねーよ」
「七瀬なら仕方ないって、みんな思ってたけど。あの子なら嫌だな」
「嫌って?」
「別に。変な事言ってゴメンよ。でもしばらく女子の目は冷たいから覚悟しな」
「おいっ!」
そのまま
俺の前から逃げて行ってしまった。
言うだけ言って
あとは逃げて行く
ずるいぞ女子!
いつも一方的に言われるだけ言われる俺にも、問題がアリなのか。