さよならさえ、嘘だというのなら

教室の扉の前で変な空気を作る俺と女子。

「別にイチャついてねーし」

「ちょっと可愛いとすぐこれだもんね。七瀬がかわいそう」

「だから、どうして七瀬が出てくんだよ」

「七瀬の気持ちわかってんでしょ。もう公認じゃん」

「勝手に決めんなよ」

「痛いって!」

俺の手に力が入ったのか
ヒステリックな高い声を出し、そいつは俺の手を振り払い俺を見上げる。

それこそ
幼稚園からの知り合いで
七瀬とも仲の良い
サッパリした頭のいいヤツで、俺とも仲が良かったのに

今はガンガン俺を責める。

「颯大、変わった」

「はぁあ?」

「颯大はもっと優しくて平和でいいヤツだったのに、最近変だよ」

「どこが?」

「浮かれてる」

ズバリ言われて言葉に詰まる。

そう……かもしれない。

「ごめん」
素直に謝ると
相手も苦い顔をした。

「私も言いすぎた。ゴメン。でもさ……夏休み明けてからちょっと変だから。ううん、颯大だけが変じゃないの、何となく……こう……前と違ってる」

「理由は?」

「わからない」

こいつのカンは鋭い。

「颯大ってさ……けっこー人気あんだよね」

「ねーよ」

「七瀬なら仕方ないって、みんな思ってたけど。あの子なら嫌だな」

「嫌って?」

「別に。変な事言ってゴメンよ。でもしばらく女子の目は冷たいから覚悟しな」

「おいっ!」

そのまま
俺の前から逃げて行ってしまった。

言うだけ言って
あとは逃げて行く

ずるいぞ女子!

いつも一方的に言われるだけ言われる俺にも、問題がアリなのか。


< 49 / 164 >

この作品をシェア

pagetop