さよならさえ、嘘だというのなら
「おはよう。昨日はありがとう」
爽やかな声が俺の元に届き
振り返ると須田海斗が立っている。
「あ……うん。おはよう」
並んで教室に戻ると
須田海斗は周りに説明するように、大きな声を出す。
「昨日は凪子が世話になってゴメン。急にまた調子が悪くなって、チャリで送ってもらったんだって?」
クラス中の奴らが
俺達の話に聞き耳を立てていた。
「西久保君に偶然出会えて感謝だね。家に寄ってくれたらよかったのに」
須田海斗はスラスラ言うけれど
昨日、凪子はカンスケさんが怖くて立ち止まっていただけで、自分で俺に『乗せて』って言い、調子は悪くなかった。
「いや……別に……」
戸惑う俺に須田海斗は感謝する。
「本当にありがとう。命の恩人」
大げさに言うと
周りも『あーそーなんだ。ラブラブじゃなくて、ただの人助けね』って顔になっていた。
でも……それは違う。
凪子が海斗にウソをついて
そーゆー話にしたのだろうか。
イマイチ納得しないまま
そういえばって思い
俺は須田海斗に小声で聞く。
「俺も昨日見たんだけど」
冷やかすような声にも、須田海斗は余裕で「何?」って微笑んだ。
「松本結衣とツーショット」
へへへと笑う俺。
弱みを握った感でけっこう嬉しかったりして。
「お似合いだった」
明るく言うけど
須田海斗は不思議そうな顔をする。
「何の話?」
「昨日さ、町の外れの公園の近くで、須田君と松本結衣が並んで……」
「人違いじゃない?」
きっぱり冷たく言われてしまう。
えっ?
いや、昨日しっかり見たんだけど。
松本は嬉しそうに照れた感じで歩いていて、お似合いのふたりで……。
「僕は家にずっといたから、人違いだね」
須田海斗はそう言った。
思いきり
否定した。