さよならさえ、嘘だというのなら

「優しくて妹さん想いの人」

「ふーん」

「『ふーん』だけ?」

「だけ」
きっぱり言い切ると「もうっ!」と、小さな手が俺の背中を叩く。

「夢があるっていいよな」

「夢で終わるかもしれないけどね」

いや松本なら
実現できるだろう。

夢か……凪子の夢は

なんだろう……。

「頑張るよ私」

「おお」

そんな会話をしていると

どこからか視線が刺さる。

認めたくないけど
赤いジャガーが路肩に停まり
俺の顔を凄い顔で見つめていた。

「颯大!毎日毎日可愛い子引っかけてんじゃねーよ!おじさんはグレるぞ!」

イケメン医師が叫んでる。

どうして
いつも智和おじさんに見つかるんだろ。

俺のガッカリ顔を見て
松本は楽しそうに本気で笑う。

かなり可愛いから
この町初のモデルになれるかも。

久し振りに
温かい期待を胸に込めた。





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