さよならさえ、嘘だというのなら
崩れる
家に帰ると
玄関先で赤いジャガーのお出迎え。
カンベンしてくれ。
「日替わりで彼女作ってんのか?」
ダブレットをいじりながら俺にツッコむ中年医師。
「えーっ颯大モテモテー」
台所から顔を出す母親の目が輝いてる。
マジやめて……って母さん、仕事は?
「パートは?」
「今日は午後から休み。6時から学校で臨時保護者会あるって上から聞いたからね。あんた紙を出しなさいよ!」
上からって……さすが小さな町。
学校からプルミル工場にも連絡行ってんのか?
俺のカバンを奪おうとするので、阻止して保護者宛の用紙を提出。
母さんは「よしよし。颯大はいっつも終わってから出すから油断ならない」と、ブツクサ。
うん。何も言えねー。
今日の帰り
学校から渡された紙。
「ウサギ事件か?」
智和おじさんが口を挟む。
もう町中に広がってんだろう。
「めんどうな事件だな」
智和おじさんの手元を覗くと
タブレットには例のドロン山のサイト。
おどろおどろしい山が暗く冷たく写ってる。
公園から見える山は
青い空もオレンジ色の黄昏も良く似合う
綺麗な山なのに
こんなサイト作りやがって
「山の画像がまた変わって、閲覧数も増えてるようだ」
「管理人はまだ捕まらないの?」
「逃げ足が速いんだろねー」
「どんな顔でサイト開いてんだろ」
「ただ楽しいだけ」
サイテーなヤツだな。
俺は溜め息をして二階に上がり
自分の部屋のベッドに沈み込む。