さよならさえ、嘘だというのなら
ぽつりぽつりとした
にわか雨が俺から彼女を引き離す。
「……ありがとう」
カバンを持ち
凪子は恥ずかしそうに笑う。
「今日はありがとう」
「いいよ。じゃ……」
急に俺も恥ずかしくなり
チャリに乗ってから、ふと思い凪子に声をかけた。
「須田。カッターナイフちょうだい」
そう言うと
凪子はスカートのポケットからカッターナイフを取り出し俺に渡す。
教室で注目したカッターナイフ。
ウサギ殺しの凶器ではない
きっとこれは
自分を傷付けていた凶器。
ひとり自分の部屋で
どんな気持ちでこれを握っていたのだろう。
「没収する」
明るく言い自分のジャージのポケットに入れた。
「気をつけてね」
「ダッシュする」
雨が強くなってきた。
「須田も早く家に帰れよ」
「うん」
「またな」
「またね」
名残惜しく別れ
俺は戻りたくない学校へ戻る。
柔らかな細い身体を思い出し
強くなる雨にも負けないくらい身体が熱い。
キスぐらいすればよかった
いや
無理だな。
へタレた自分に笑いながら
足に力を入れて学校へ向かった。