さよならさえ、嘘だというのなら
嘘つき
家に帰ったのは
いつもより遅かった。
必死で片付ける俺に先輩から電話が入り
『颯大。校庭20周走ってから帰ってよし』
地獄のお告げ。
こうなりゃヤケだと思い
一生懸命走って
ひとり部活終了。
ヘロヘロになってから
またチャリでカンスケさんの前を挨拶し、家までの道を飛ばす。
疲れた。
もうメシいらない
ひたすらベッドが恋しい
倒れて寝たい。
自分の部屋に入り
そのままドサリとベッドに沈む。
凪子の柔らかい身体を思い出しながら、うとうとしていると
「颯大ー!」
まどろみの中で母さんの声がする。
もう動けない。
返事もしないでいると
「颯大!」
下に行くまで声が止まらないのか
あきらめてくれ母さん。
「颯大。七瀬ちゃんが来てる」
七瀬?なんでまた……説教か?
いや
もう今日は許して欲しい。
「早く降りて来なさい!」
怒り声に負け
俺は身体にムチ打って起き、階段を降りる。
今日の説教は明日にしてほしい。
ふらつきながら玄関に行くと
青ざめた顔で七瀬が立っていた。
「颯大」
「ごめん許せ。ちゃんと後片付けして校庭走って帰ったから。サボってごめん。お前は先輩の家でクーラーとスイーツ……」
「結衣がいないの」
「あ?」
「結衣が行方不明なの」
こらえきれない涙が七瀬の頬を伝う。