さよならさえ、嘘だというのなら
ポロポロと大きな涙が七瀬の頬を伝う
「結衣がいない」
「いやちょっと待って」
「結衣がいないの!」
叫ぶような大きな声を出すので
家の中から驚いて妹が出てきたから、母さんが出て来ないように妹の元に走る。
「外に出よう」
俺はサンダルを履き
七瀬の背中を押して外に出る。
いつの間にか空はうっすら暗くなり
星が輝く。
寝てる間に夜になったんだ。
今、何時だろう。
「松本がどうした?」
七瀬の肩を優しく撫でてゆっくり聞くと
七瀬はやっと安心したのか俺に涙声を出す。
「結衣が家に帰ってない」
「森ちゃんか江崎の家とか?」
「違う。森ちゃんから電話きたんだもん」
「松本は須田海斗と帰ったぞ」
「海斗君は『家まで送った』って言ってた」
「その後、どこかに出かけた?」
夕方振った雨がまた繰り返すのか
ジメジメとした雨の香りがする。
「結衣に連絡しても誰も繋がらないし、結衣のお母さんに聞いたら制服がないって。学校のカバンもないから着替えずにそのままどこかに行ったか、よその街から来た変なのに拉致されたかもしれない」
「おい……」
それは大げさだって言いたかったけど、真剣な七瀬の顔を見ると言えなかった。
「須田海斗は家まで送ったんだろ」
「うん」
じゃぁ
なんで制服で
カバン持ったまま
どこへ行く?
こんな田舎で。