結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
「父親のようでも兄のようでもあったけど…カメラマンとモデルとか、仕事の上での先輩と後輩とか…そういう関係でもあったと思うけど、だんだん大人になっていくレナをずっと、そばで見ていてくれたのは須藤さんだものね。レナが結婚を考えたり、一緒に生きていこうって思える人が見つからなかった時に、将来一人になることを心配してくれたんだと思うのね。もしそうなったら、自分が一生レナを守ろうって思ってくれたんだと思う。」

「うん…。」

「本当は、保護者じゃなくて、結婚してちゃんと夫婦になりたかったんだと思うわ…。」

「須藤さんは、私にはそんなこと…好きとか…一言も言わなかったよ…。ただ、結婚するからって、無理に自分を好きにならなくてもいいって…。一緒に暮らしているうちに、お互いが自然とそんな気持ちになれば、それはそれでいいって…。」

「それが、須藤さんの優しさでしょ。レナの気持ちが自然と自分に向くまで待とうって…気が長い話ね。」

レナは何も言えず黙り込んだ。

今まで、そんなふうに考えたことはなかった。

「まあ、これはあくまで私の憶測よ。須藤さんには深い意味はなかったのかも知れないし。」

「うん…。」

「須藤さんにも見てもらわないとね。」

「えっ?!」

「レナの花嫁姿よ。レナが大切な人と誰よりも幸せに笑ってる姿を見せて、そろそろ須藤さんを安心させて…解放してあげなくちゃね。」

「そうだね…。」



「ただいま。」

「おかえり。どうしたの、これ?」

段ボール箱をかかえたレナを見たユウは、驚いて立ち上がると、レナの手から段ボール箱を受け取る。

「うん。リサに預かってもらってた荷物。アルバムとか…いろいろ入ってるの。まだもうひとつ車にあるから、取ってくるね。」

「重いだろ。オレ行くよ。車のキー貸して。」

「いいの?じゃあお願い。」

ユウは駐車場に行くと、自分の車のトランクを開けて段ボール箱を持ち上げかけて、ふたが少し開いて見えていた写真集に目を留めた。

「これ…。」

表紙に須藤透と言う名前を見つけて、ユウは少し複雑な気分になる。

(特に深い意味はないんだと思うけど…なんか複雑…。でもこんなことで嫉妬すんのもどうかと思うし…。)

ユウは段ボール箱を手に部屋へ帰ると、なに食わぬ顔でリビングのソファーの横へそれを置いた。

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