結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
「ありがと、ユウ。ハイ、これ。」

レナが差し出したアルバムを受け取ると、ユウはその表紙を開いて嬉しそうに笑った。

「高校の卒業アルバムかぁ…。懐かしいな。」

進級時のクラス写真や学校行事の時の写真には、懐かしい顔が並んでいる。

「あっ、レナ見っけ。」

まだあどけなさの残るレナの、懐かしい制服姿を目にしたユウの胸に、甘酸っぱい切なかった日々の記憶が蘇る。

(この頃のレナもかわいい…。)

高校2年の文化祭でシンヤと一緒にライブをした時の写真を見つけると、ユウは少し気恥ずかしくなり、頬をかいた。


(若いな…。あの時、初めてレナを想って作った曲を演奏して…サトシが歌ったけど、なんか代理公開告白みたいで恥ずかしかったな…。)

“祭りの後”とタイトルをつけられた後夜祭の写真の中に、長く伸びる2つの影の写真を見つけると、これはあの日レナが撮っていた写真だとユウは気付いた。

(レナと一緒に、踊ったな…。あの時、レナの手を握って、体を寄せ合って…すごくドキドキした…。)

日々起こるなんでもないことも、レナと一緒にいると楽しくてドキドキして、ちょっとした事件だった。

修学旅行の写真には、沖縄でレナ、マユ、シンヤと一緒に笑っている自分の写真を見つけた。

(楽しかったな、修学旅行。レナと一緒にビーチでふざけて写真を撮ったり…4人で国際通りに行った時、シンちゃんが佐伯を…。あれにはビックリしたけど、その後、レナと手を繋いで歩いて…。お土産に琉球ガラスのグラスをおそろいで買ったな…。ロンドン行く前に処分しちゃったけど…。あの時はレナのこと、全部忘れるつもりだったからな…。)

そう言えば、レナはあの琉球ガラスのグラスをどうしたのだろう?

(今、ここで見掛けないってことは、割れちゃったのか…それか、レナもニューヨークに行く前に、捨てたのかな…。)

キッチンで夕食の準備をしているレナの後ろ姿を、ユウはなにげなく見つめる。

(またひとつ、聞きにくいけど聞いてみたいことが増えちゃったよ…。)

3年の写真には、進級時のクラス写真にしかユウは写っていない。

(そっか…。高校中退したんだった…。)

学校行事や日常の風景など、そこに写っているレナは、どれも昔の幼い頃のような、寂しげな表情をしていた。

(レナ…2年の時と全然違う…。)

部活動のページには、軽音部の写真に楽しげにギターを弾くユウの姿があった。

(これ…なんとなくだけど、文化祭と軽音部のオレが写ってる写真って、なんか他のと違う気がするんだよな…。)

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