結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
ユウはアルバムの最後に掲載された、3年のクラスの寄せ書きの中に、懐かしい友人の名前とそこに綴られた言葉を見て笑う。

(シンちゃん…“絶対マユと結婚する!!誰にも渡さん!!”って書いてるよ…有言実行だな。)

それに対しマユは完全スルーかと思ったのだが“初志貫徹、有言実行”と書いているあたり、もしかするとマユはマユで、この頃からシンヤを好きだったのかも…とユウは思う。

(佐伯も素直じゃないからな…。シンちゃんは佐伯のこと、鈍感だって言ってたし。)

ユウは、寄せ書きの端の方にレナの文字を見つけた。

小さな文字で一言“いつかまた笑って会えますように。”と書いてある。

(これ…友達に?それとも、オレのこと…?)



夕食と入浴を済ませた後、次の日が二人とも休みと言うこともあり、ゆっくりお酒を飲みながらアルバムを見ることにした。

こたつに入って、二人はウイスキーを水割りで飲む。

「レナ、ウイスキー飲めるんだ。」

「だって私、成人だよ?お酒は二十歳になったら、何を飲んでもいいんだよ。」

(そういう問題?もしかしてレナ、天然…?)

確か、リサのベンツを運転するのも、免許は持ってるからと当たり前のように言っていた。



「小さい頃のアルバムも持ってきたよ。」

アルバムの中では、幼い頃の二人が手を繋いで歩いたり、一緒に遊んだり、おやつを食べたり、仲良く昼寝をしたりしている。

「ちびレナ、かーわいーい…。」

小さなレナを見て、ユウは思わず目を細めた。

いつか二人の間に女の子が生まれたら、こんな感じなんだろうな…と、まだ見ぬ未来の娘を想像したりもする。

「ちびユウもか-わい-い。」

レナもまた、ユウと同じように、いつか二人の間に男の子が生まれたら、こんな感じなんだろうな…と、まだ見ぬ未来の息子を想像した。

「レナ、何考えてんの?」

「ん?ユウと同じこと。」

「えっ?!」

思わずユウは焦って声を上げる。

(レナ…読心術でも体得してる…?)

幼い頃の二人はどこに行くのも、何をするのも一緒だった。

「ずっと、一緒にいたね。」

「うん。」

ユウと二人で写る写真のレナは、どれも穏やかに笑っている。

(レナは小さい時から、オレと一緒の時は笑ってたんだ。なんか嬉しいな…。)

レナが感情をあまり表に出さなくなったのは、父親が亡くなってからだったと思う。

一緒にいても、いつも悲しそうで、寂しそうで…。

幼心にユウは、レナにいつもみたいに笑って欲しくて必死だった。

(笑わなかった代わりに、泣きも怒りもしなかったけどな。あれって今思えば、自己防衛本能だったのかな…。これ以上、悲しいこととか寂しいことに傷付かないように、って…。)


< 112 / 164 >

この作品をシェア

pagetop