結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
心の叫びもむなしく、ユウは散々冷やかされながら、したたか酒を飲まされた。

レナはレナで勧められるがままに、淡々とその酒を飲んだ。

ヒロは楽しげにグラスを傾けながら、隣で酔って机に突っ伏して眠っているユウを見て、レナに優しい声で話し掛ける。

「まぁ、こんなヤツだけど、これからユウのことよろしくね。優しい分、弱いとこもあるから、しっかり支えてやって。」

レナは微笑みながらうなずいた。

「もしユウが悪さしたら、すぐにオレに言って。2度とそんなことできないようにお仕置きするから。」

おどけたように笑って言うヒロに、レナも笑って答える。

「大丈夫ですよ。ちゃんと約束したので…。もし万が一、約束を破った時には…私がきつーくお仕置きします。」

レナの言葉に、ヒロは満足そうに笑って、グラスのジンライムを飲み干した。

「ユウはホントに、いいお嫁さんを見つけたなぁ。安心してうちの末っ子を任せられる。」

ヒロはユウをうちの末っ子、と言いながら、優しく笑ってユウの頭をワシャワシャと撫でた。

(ユウ、大事にされてるんだ…。ミュージシャンとしてだけじゃなくて…まるで家族みたいに思ってもらってるんだな…。)

「ヒロさん、これからもユウのこと、よろしくお願いします。」

レナはユウの背中に触れながら、ヒロに頭を下げた。

そんなレナを見て、ヒロはタバコの煙を吐きながら嬉しそうにうなずく。

(ユウはみんなに愛されて幸せだね…。大切なみんなに出会えたこと思えば、ロンドンでの10年間はユウにとって必然だったのかも…。)

もしもそうなら、ユウに会えなくて寂しかったレナの10年間は、無駄じゃなかったように思えた。

つらかった記憶も、寂しかった日々も、あの時があるからこそ今があって、今の二人がいる。

過去のすべてにおいて、無駄なことなどひとつもなくて、すべてが今に繋がっている。

あの時の想いのすべてが、今、二人を繋いでいる。

そしてこの先も、たくさんの人や、たくさんの想いが繋がって行くのだろう。

すべては、なるべくしてこうなったのだと思うと、これから何があっても、二人なら乗り越えて行けるとレナは思った。



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