結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
「ユウ、起きて…。帰るよ。」

レナはユウの体を優しく揺する。

打ち上げもお開きとなったが、ユウは酔ってぐっすりと眠っている。

「しょうがねぇなぁ…。」

ヒロはなかなか起きようとしないユウの肩を勢いよく叩くと、耳のそばで、わざとらしく大声をあげた。

「ユウ、起きないなら、オレが彼女、もらっちまうぞ。」

その言葉にユウは目を覚まし、慌ててレナを抱き寄せる。

「ダメ!!レナはオレの!!誰にも渡さん!!」

自分の言葉に驚いて、ユウは完全に覚めた目をパチクリさせた。

「ヒ、ヒロさん?!」

レナはユウの腕に抱かれながら、顔を真っ赤にしている。

「ユ、ユウ…。」

そんな二人を見て、ヒロは大笑いしながらユウの背中をバシバシ叩いた。

「おもしれぇ!!オレに彼女を奪われないうちに、さっさと帰れ!!」

「ハ、ハイ…。」

ユウも顔を真っ赤にしながら、ヒロに頭を下げた。

「お疲れ様です…。」

「おぅ、気を付けて帰れよ!!」

まだ赤くなったままの顔で、レナもヒロに頭を下げる。

「またね、奥さん!!」

ヒロに見送られながら、二人は真っ赤な顔でバーを後にした。



タクシーで家に帰ると、二人はそのままベッドに倒れ込んだ。

さすがに酔いが回ったらしい。

「レナ…。」

「ん…?」

「なんか、ごめんな…。」

「何が?」

「その…あんな形で大事なこと決めて…。」

申し訳なさそうに呟くユウに、レナはニッコリと微笑んだ。

「ううん…嬉しかったよ…。ユウがみんなにすごく大事にされてるのがわかったから…。」

レナはユウにギュッと抱きつくと、幸せそうに笑った。

「ユウ…大好き…。」

「レナ…。オレもレナが大好きだよ…。」

二人はそっと唇を重ねると、幸せそうに微笑みながら眠りの淵へと落ちた。



翌朝、ゆっくりと目覚めたユウは、隣にレナがいないことに気付いた。

(レナ…もう仕事に行ったのか…。)

あれだけ強い酒を飲んでも平気な顔をしていたレナを、敵に回すと怖い相手がまた一人増えたとユウは苦笑いした。

リビングで、レナが用意してくれた朝食を食べていると、ユウのスマホが鳴る。

(誰だ…?)

スマホの画面には直子からの電話を知らせる文字が映っていた。

(おふくろ…?)

不思議に思いながら電話に出ると、相変わらず元気な直子の声がした。

「ユウ、今、日本についた。空港にいるの。」

「あっ…今日だった!!」

直子が夫と日本に来るのが今日だったことを、ユウはすっかり忘れていた。

「レナちゃんは仕事?」

「うん。」

「じゃあ、今夜一緒に食事でもしましょう。」

「わかった。」

ユウは待ち合わせの場所と時間をメモして電話を切ると、レナに今夜の直子との約束をメールした。

(おふくろたち、夜までどうすんだ?観光?)

< 133 / 164 >

この作品をシェア

pagetop