結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
「最初に結婚情報誌見た時、結婚式とか披露宴の準備って大変だなとは思ったけど、実際にやってみると想像以上だね。」

「ホントだな。」

ユウはレナの背後に回ってレナの肩を揉む。

「どう?」

「すごく気持ちいい。ユウ、上手だね。」

「そうか?子供の頃、よくおふくろの肩を揉まされた。それがまた注文が多くてさぁ…。」

「直子さんらしいかも。」

「まぁ…そうやってガチガチに肩が凝るまで働いて、オヤジが死んでから17年近くも、女手ひとつでオレを育ててくれたんだから…おふくろにはホント感謝しないとな。」

「そうだね…。私たちの母親は、二人ともすごいね。」

「あの結婚情報誌読みながら、結婚式とか披露宴とか、誰のためにやるんだ?って思ってたけど…何となくわかったような気がするわ。」

「何?」

「結婚は家同士の物だって考え方もあるからさ。親は親で、自分たちの子供に幸せになって欲しいじゃん。まだまだ子供だって気持ちもあるから、いろいろ世話焼くだろ。それが家同士の価値観とか相性の良し悪しで、いいようにも悪いようにも転がるんだろうな。本当は、自分たちの親とか、今まで世話になった人たちに、幸せそうな姿を見てもらうってだけじゃなくてさ…親に生んでもらって…育ててもらったおかげで、一緒に生きていこうって思える人と巡り会えたんだって、感謝の気持ちを表すみたいな…。あと、二人がこれから一生添い遂げるって神様に誓うところを、親しい人に見届けてもらう。そうして初めて、夫婦だって認めてもらえるような気がしない?」

「うん。ちゃんと見届けてもらおうね。」

「準備は正直、疲れるけど…。一生に一度のことだし、頑張ってみるか。」

「一生に一度?」

レナがいたずらっ子のように、レナの肩を揉むユウの顔を真上に見上げる。

「えっ?違うの?」

急に慌てて、ユウはレナの顔を覗き込む。

「冗談。ユウとできれば、一生に一度で充分だよ。」

「はぁ…。」

ユウはレナを後ろからギューッと抱きしめると、ホッとして大きく息をつく。

「やっぱり小悪魔だ。オレ、心臓もつかな?」

「ん?」

「なんでもない。」

「一生に一度なんだから、長生きしてね。」

レナは笑ってユウの頬にキスをした。



< 141 / 164 >

この作品をシェア

pagetop