結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
入籍の予定日が近付いて来た。

ユウはレナと夕食を取りながら、ふと考える。

(オレとレナはこれからずっと一緒に暮らせるけど…リサさんは、大事な一人娘を嫁がせるんだよな…。)

「レナ。」

「ん?」

「これから入籍の日まで、お互い親のところへ行く?」

「なんで?」

「何て言うか…。レナはリサさんの元から嫁ぐって言うか…。もうすぐレナは、高梨じゃなくて片桐になるんだよ?結婚前の最後の親子水入らずの時間があった方がいいのかなって。」

「なるほど…。」

レナはユウの入院中にリサと生活していたし、結婚の準備などで前よりリサと顔を合わせている分、そんなにリサとは離れていない気もしたが、それがリサと自分に対するユウの優しさのような気もした。

「そうだね…。それもいいのかも。」

「オレもしばらくおふくろとゆっくり話してないし、テオさんともいろいろ話したいしな。」

「直子さん、喜ぶよ。」

「じゃあ、明日からそうする?後で連絡しとかないとな。」


夕食を終えると、それぞれの母親に電話をして、入籍の日の朝まで一緒に過ごしたいと伝えると、ユウとレナは少しの着替えと、必要な物をバッグに詰め込んだ。

荷物の準備と入浴を済ませた後、二人は一緒にベッドに入り、指を絡めて手を繋ぐ。

「ちょっとの間、会えないけど…。」

「うん…。少しの間だけど、なんか寂しいね。ユウと一緒に暮らし始めて…ずっと離れてたのが嘘みたい。毎日ユウと一緒にいられるんだもん。少しでもユウがいないだけで、すぐに寂しいって思っちゃう…。」

「オレもそうだよ。よく10年も、レナと離れていられたなーって、今更ながら思う。」

「ユウと一緒にいられるって、幸せ。」

「結婚したら、嫌って言うほど一緒だけど?」

「嫌って言うの?」

「…言わないな。ずっと一緒がいい。」

「私も、ずっと一緒がいい。」

二人は向かい合って見つめ合うと、どちらからともなく唇を重ねた。

「14日の11時に、迎えに行くから。それから一緒に区役所に婚姻届け、出しに行こう。」

「うん。次にこの部屋に帰って来る時には、私たち、もう夫婦になってるんだね。」

「そうだな…。」

ユウはレナの唇に優しくキスをする。

「二人で過ごす、独身最後の夜だし…。やっぱり…しちゃおうかな。」

「ユウのエッチ。」

「そうだよ。知らなかった?」

「知ってる…。すごい、エッチ。昔はユウがこんなにエッチだなんて知らなかった。」

「昔は昔。キスしたいとか抱きしめたいとか…思ってるだけで何もできなかったけど…。」

「そんなこと思ってたの?!」

「だってさ…ずっと好きだったから。レナ、かわいいし…。」

「やっぱり、ユウって、エッチ…。」

「レナにだけだから、いいでしょ?」

「……うん…。」

「レナ、愛してる。絶対に、二人で幸せになろうな。」

「うん…。」


二人で過ごす独身最後の夜。

二人は何度も唇を重ね、ほんのしばらく会えない分まで、互いの温もりを求め合った。



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