結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
ユウとレナが、お互いの親元へ帰って3日目。

とうとう、入籍の日の朝がやって来た。


リサはレナのために作った新しい服を、レナにプレゼントした。

「レナは今日から片桐さんになるのね。」

「そうだね。」

リサの作ってくれた服に着替えたレナは、改まってリサの前に立つ。

「お母さん。」

「なあに、急に改まって。」

普段とは違う“お母さん”と言う呼び方に、リサは照れ臭そうにレナを見る。

「私を産んでくれてありがとう。」

「うん…。」

「お父さんの分まで私を愛して、大事に育ててくれて…ずっと見守ってくれて、ありがとう。」

リサはレナをギュッと抱きしめると、優しくレナの髪を撫でた。

「私の娘に生まれてきてくれてありがとう、レナ。ユウくんと、幸せになりなさい。」

「うん…。」

リサは目を潤ませながら、優しく微笑んだ。

「二人が困った時は、いつでも頼っていいのよ。私は、あなたたちの母親なんだから。」

「うん…ありがとう…。」

レナの目にも涙が浮かぶ。

「これから大事な人の元へお嫁に行くのに、泣かないの。」

リサは指でレナの涙を拭うと、ニッコリと笑った。

「結婚式で、あのウエディングドレスを着たレナが、あのタキシードを着たユウくんの隣を歩くのね…。楽しみにしてるわ。」

「うん。」



ユウは直子とテオに見送られ、玄関を出ようとしていた。

「じゃあ、そろそろ行くわ。」

靴を履き立ち上がると、ユウは直子の顔をまっすぐに見た。

「おふくろ、オレを育ててくれて、本当にありがとう。」

「この子ったら、急に改まって…。」

直子は涙で潤んだ目を見られないようにうつむいて、指でそっと涙を拭った。

「テオさん、おふくろをよろしくお願いします。」

ユウはテオに深々と頭を下げた。

「もちろんだよ。君の大事なお母さんは、僕が一生守るから安心して。」

「ハイ。」

ユウが柔らかく微笑むと、直子はユウの手をギュッと握りしめた。

「もう、レナちゃんを泣かせるんじゃないわよ。アンタのこの手で、ちゃんと守ってあげなさい。誰よりも幸せにしてあげるのよ。」

「うん…。必ず幸せにする。」

テオはユウと直子の肩を抱いて優しく笑った。

「今度は、二人で帰っておいで。ここは、君たち二人の家でもあるんだから。今日からレナも家族になるんだからね。」



< 143 / 164 >

この作品をシェア

pagetop