結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
直子とテオの家を後にして、ユウはリサの家までレナを迎えに行った。

ユウは出迎えてくれたリサに、深々と頭を下げた。

「今まで、ありがとうございました。必ず、レナを幸せにします。」

リサは嬉しそうに微笑むとユウに頭を下げた。

「こちらこそ、娘をよろしくお願いします。至らないところもあるかと思いますが、どうぞ大事にしてやって下さい。」

「ハイ。大事にします。」

真剣な面持ちのユウを見て、リサは安心したように微笑んだ。



リサの家を出て、ユウとレナは車で区役所に向かった。

「緊張する…。」

「うん…。」

助手席のレナは初めて見るワンピースに身を包んでいる。

「そのワンピース、かわいいじゃん。すごく似合う。」

ユウがそう言うと、レナは嬉しそうに笑った。

「リサから、嫁ぐ娘へのプレゼント。」

「そっか。愛されてんな。」

「うん…。幸せ。」

「テオさんが、今度は二人で帰っておいでって。今日からレナも家族だからって。」

「ドイツ人のお父さんだね。ドイツ語、習おうかな。」

「そうだな。アメリカと日本とドイツか…。レナ、グローバルだな。」

「ユウもね。」

「オレの両親は日本人だけど。」

「ユウはロンドンに10年もいたでしょ。ドイツ人のお父さんに、アメリカ人と日本人のハーフの両親を持つ妻。もし子供が生まれたら、その子はクォーターだよ。」

「子供…。気が早いな…。」

ユウは照れ臭そうに頬をかく。

「そのお父さんはユウだからね。」

「お父さんって…気が早いってば。それよりまずは、レナの旦那さんとか、片桐さんのご主人って言われたい。」

「ふふ…そうだね。」


区役所に到着すると、車を降りた二人は緊張の面持ちで、しっかりと手を繋いで窓口へ向かった。

婚姻届けを窓口の職員に手渡すと、書類の不備がないかを確認していた職員が、顔を上げて二人ににこやかな笑顔を向ける。

「御結婚おめでとうございます。確かに受理いたしました。」

受理印を婚姻届けにポンと押して、この後の名義変更などの流れを簡単に説明しながら、それを書いた書類を渡してくれる。

「末長くお幸せに。」

ユウとレナは照れ臭そうに笑うと、ペコリと頭を下げて、区役所を後にした。


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