結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
二人は結局、前にこたつを買ったショッピングモールに行くことにした。

その中のレストラン街のイタリアンレストランでパスタやピザのランチを注文すると、二人で仲良く分け合って食べた。

「もっと豪華な所でも良かったのに。」

ユウがポツリと呟くと、レナはパスタをクルクルとフォークに巻き付けながら笑った。

「ユウと一緒ならそれでいいの。それに買いたい物もあったし。今日の晩御飯の材料も買わなきゃいけないし。」

「そっか…。ならいいんだけどさ。」

レナは本当に欲がないな、とユウは思う。

(今日くらい贅沢したっていいのに…。でもそこがレナのいいところなんだよな…。)


食事を終えてレストランを出た二人は、手を繋ぎ指を絡めて歩いた。

相変わらず周囲からの視線は気になるが、今日はそれもなんだか悪い気がしない。

(オレたち、今日、結婚したんだー!!今日からオレたち夫婦なんだー!!…って、周りの人たちに大声で言いたい気分…。もちろん言わないけど…。)

「ねぇユウ、今日はなんの日?」

「えっ?オレとレナの結婚記念日?」

「それもあるけど…もうひとつ、あるでしょ?」

(もうひとつ?今日は…2月14日…。)

「あぁ、バレンタインデーだ。」

入籍のことで頭がいっぱいだったユウは、世間では今日がバレンタインデーだと言うことをすっかり忘れていた。

「ユウに、チョコレート買おうかなって。本当は作ろうと思ってたけど作れなかったし。」

「バレンタインだから?」

「うん。昔はよくバレンタインデーに手作りのチョコ、あげたでしょ?去年は再会したばかりでどうしようかと思ったけど…あの時は、あげられなかったもんね…。」

“去年はあげられなかった”のは、その時レナが須藤と婚約していたからと言う意味だとわかると、ユウはなんとなくモヤモヤした気分になる。

「オレがロンドンへ行ってからは、バレンタイン、どうしてた?昔オレに作ってくれたみたいに、誰かに作ってあげたりした?」

「うん、作ってた。」

「えっ…。」

(誰に渡したんだろう?!須藤さんとか…?)





< 146 / 164 >

この作品をシェア

pagetop