結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
ユウは、再び社長室に呼び出されていた。

「ユウ…またしてもやられたな。」

「スミマセン…。」

先日のレナとの熱愛発覚騒動で呼び出された時には笑みを浮かべていた社長が、今回は厳しい表情で腕組みをしていた。

真剣に付き合う二人の交際が世間に知られるのと、手当たり次第に女性を食い散らかしてきた女性遍歴を知られるのとではわけが違う。

ましてや、つい先日、レナとの熱愛が報じられたばかりのユウが、実はたくさんの女性にひどい扱いをしてきたと報じられたのだから、イメージダウンは間違いない。

「それで…本当は聞きたくもないが、この記事に書いてあることは真実なのか?」

社長は厳しい目でまっすぐにユウを見た。

「多少脚色はされてますけど…ほぼ事実です…。」

ユウが答えると社長は大きなため息をついた。

「オマエなぁ…相手くらい選べよ。一応それでも、芸能人の端くれだろう?」

「スミマセン…。まだデビュー前だったので、無自覚でした。」

「もしかして、ロンドンにいる時もそうだったのか?!」

「……ハイ…。」

社長は額に手を当て、しばらく考え込む。

「とりあえず、下手に動くのはかえって危険だ。どこで誰に挙げ足を取られるかわかったもんじゃないからな。報道陣に何聞かれても、ノーコメントで押し通せ、わかったな!!」

「ハイ…。」

ユウが力なく返事をすると、社長が大きくため息をついた。

「若気の至りってもんもあるがな…。今回のこの騒動で、誰が一番傷付くのか、よく考えろ。オマエにとっては自業自得だが、オマエには守らなきゃならんものがいくつもあるだろう?」

「…ハイ…。」

「オマエも男なら、自分のしてきたことをしっかり反省して、メンバーにも、彼女にも、彼女のお袋さんにも、きっちり詫び入れろ。」

「わかりました…。」

「今日はもういいから帰れ。アイツに送らせるから。しばらくは針のむしろだ、覚悟してろ。」

「ハイ…。本当にスミマセンでした。」

ユウは深く頭を下げた。


かつて自分のしてきた自分勝手で無責任な行動が、またたくさんの人に迷惑を掛けてしまった。

そしてまた、レナを悲しませ、不安にさせてしまっただろう。

何もやましいことなんてないと思っていたのは、ただの思い上がりだったのかも知れない。

(オレの人生…考えてみたら、やましいことだらけじゃねぇか…。)

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