結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
ユウは、レナのいない部屋で一人、ぼんやりとタバコを吹かしていた。

カレンダーには、レナが書き込んだ“海外で撮影”の文字。

レナが突然帰って来なくなったことをユウが心配しないように、レナが書き込んだのだろう。

(レナがいなくて寂しいはずなのに、オレ、レナがいないことにホッとしてる…。)


長い間恋い焦がれて、やっと手に入れたはずのレナとの恋。

とても幸せだったはずのレナとの時間。

もう2度と離さないと思っていたはずの、愛しいレナ。

それなのに…。

レナを傷付けてばかりの自分が情けなくて、許せない。

ずっと一緒にいようと言いながら、確かな将来の約束もできない、不甲斐ない自分。

ユウは、シンヤに言われた言葉を思い出す。

“結婚”の二文字が、ユウに重くのし掛かる。

(シンちゃん…、こんなオレじゃ、レナを幸せになんてできないよ…。だって、オレは…。)

お互いが愛し合ってさえいれば、ずっとこのまま一緒にいられると思っていた。

一緒に暮らして同じ時を重ねていれば、それだけでいいと思っていた。

でも…。

レナはどう思っているのだろう?

一度は自分以外の男と結婚することを決め、自分から離れて行ったレナ。

きっと彼なら、幸せな未来をレナに与えることができただろう。

(それなのに、レナはどうしてこんなどうしようもないオレを選んでくれたんだろう…。)

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