結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
レナが海外から帰った後も、同じ部屋に暮らしながらユウはレナを遠ざけた。

そばにいながらどうすることもできない寂しさを抱えたまま、レナは今日も仕事に向かう。


その日、野崎の写真集の撮影がすべて終わり、野崎やスタッフたちと打ち上げをすることになった。

会場に用意されたのは、都内でも有名なホテルのレストランだった。

(人気俳優ともなると、打ち上げもおしゃれと言うか…。)

テーブルに並べられた豪華な料理と、高そうなワインを口にしながら、レナはぼんやりと手元を見つめる。

(全然おいしく感じない…。)

おいしいと評判の有名なホテルのレストランの料理なのに、レナにとってはユウと笑いながら一緒に食べるいつもの夕食の方がずっとおいしく感じられた。

(まぁ…最近ユウとは食事も一緒にできてないんだけど…。)

レナはワインを飲みながらため息をついた。


「どうかしました?」

気がつくと、いつの間にか隣には野崎がいた。

「いえ…。」

元々、極度の人見知りだったレナだが、何かとレナに対して距離を詰めてくる野崎が、レナは苦手だった。

仕事だからと真剣に撮影には臨んだが、それ以外のところではレナはできるだけ野崎と距離を取るようにしていた。

「さぁ、どうぞ。もっと飲んで。」

「はぁ…。」

野崎がやや強引に、レナのグラスにワインを注ぐ。

「今回は御一緒できて本当に良かったです。高梨さんのことがずっと気になっていたので。」

(私のこと?写真じゃなくて?!)

レナは野崎の不自然な言葉に、若干の違和感を抱いた。

(まぁ…撮影も無事に終わったし、特におかしなこともなかったんだから…。)

レナは違和感を拭うように、なみなみと注がれたグラスのワインを飲み干した。

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