結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
打ち上げも無事に終わり、ホテルを出ようとした時。

ユウのことを考えながらワインを飲んでいたせいか、少し飲み過ぎてしまったレナの足元がふらつき、倒れそうになってしまった。

(危ないっ!)

その瞬間、いつの間に隣にいたのか、レナの体は野崎に抱き止められていた。

(えっ…?!)

執拗にレナを強く抱きしめる野崎の腕から、レナはなんとか逃れようと体をよじる。

「あのっ…もう、大丈夫ですから!!」

レナが必死で野崎を押し返すと、野崎はレナの耳元に顔を近付けて囁いた。

「二人っきりになれるところ、行かない?」

野崎の言葉に身震いすると、レナは勢いよく頭を下げる。

「結構です!!お疲れ様でした!」

湧き上がる嫌悪感と、野崎に抱きしめられた感触がレナを襲う。

(何あれ…?!行くわけないでしょ!!)

レナは足早にその場を去り、駅へと向かう。

しかし電車は事故のため止まっており、タクシー乗り場にも長い列ができていた。

(最悪…。)

どうしたものかと立ち尽くしていると、不意に周囲からの視線を感じる。

「あっ、やっぱりそうだよ!」

「ほら、モデルのアリシア!!」

「ああ、あの?」

(まずい…。)

レナは踵を返すと、スマホを取り出しマユに電話をかける。

「もしもし?こんな時間にどうしたの?」

レナは電話越しに聞こえるマユの声にホッとして、先ほど駅であったことを説明した。

「そこから近いし、うちに泊まれば?」

「そうさせてもらえると助かる…。」

レナは電話を切ると、急いでマユの家に向かった。




< 30 / 164 >

この作品をシェア

pagetop