結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
マユの家に着きシャワーを借りたレナは、リビングでやっと一息ついた。

「お疲れ様。1本くらい大丈夫でしょ?」

マユが缶ビールを差し出す。

「うん…ありがと。」

差し出された缶ビールを受け取ると、レナはタブを開け勢いよくビールを飲んだ。

「はぁ…。」

「大変だったわね。」

マユも隣に座り、ビールを飲んだ。

「ねぇ、マユ…。俳優の野崎恭一っているじゃない?」

「うん。どうかした?」

「あのね…。彼の写真集の撮影をしたんだけど…。」

レナは順を追ってマユに説明した。

初対面から強引に手を握られたことや、やたらと距離を詰めてくること、さっきの打ち上げでもいつの間にか隣にいて強引にワインを勧められ、レナのことが気になっていたと言われたこと、その上ホテルを出る時に抱きしめられ、口説かれたこと…。

思い出しただけでも、レナの胸にはまた嫌悪感が込み上げて来る。

「野崎恭一ねぇ…。手が早いって、業界では有名よ。」

「そうなんだ…。」

自分を口説くために写真集のカメラマンに指名したのかと思うと、レナはまた身震いした。

「でも、撮影は今日で終わったんでしょ?」

「うん。」

「じゃあ、次からはお断りすることね。」

「そうする。」

レナは缶ビールをテーブルに置くと、スマホを取り出してユウに短いメールを打つ。


“今日はマユの家に泊まります。”


メールを送信すると、レナはため息をついた。

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