結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
「目の前にレナがいるのに、他の子とするわけないもんね。誰と何してもドキドキしないし、心がないから気持ち良くもなかったって、片桐言ってた。」

「うん…。」

レナとユウが初めて体を重ねたあの夜、ユウは“すごくドキドキしてる。本当に好きな子とは初めてだから”と言っていた。

ユウの速い鼓動が、ユウの胸に押し当てられた耳にトクトクと響いたことを、レナは今でも覚えている。

「ユウのしたことは、確かにいいことではないけど…相手もユウの体が目当てだったんなら、お互い様なんじゃないのかなぁ…。」

「だよね。私は、その、アヤって女が怪しいと思う。」

「怪しい?」

「だってさ…片桐の彼女になれる自信があったから他の子たちにも話してたんじゃないかなって。しかも片桐が、自分なら絶対に勝てると思ってたレナと付き合ってるの知って、結果、仲間たちの手前、恥かいてるわけだしさ。」

「そうなのかな…。」

「どうかしらね。ちょっと、アヤって女の周り、探り入れてみるわ。私も気になるし、レナをけなされてかなり腹立ってるし。」

「うん…ありがと…。」

「じゃ、そろそろ寝ようか。明日の朝は、ここから仕事に行くの?」

「明日は出社時間ゆっくりだから、一度帰ろうかな。」

「私は8時前には出掛けるけど、私と一緒に出る?」

「そうする。」

「じゃ、おやすみ。」

「おやすみ。」


布団に入って間もなくすると、レナの寝息が聞こえて来た。

マユは常夜灯のオレンジ色の灯りの下で、レナの寝顔を眺めていた。

(かわいそうに…。疲れた顔してる…。)

あんなに幸せそうに笑っていたレナが、今はユウを想って苦しんでいる。

(どうにかしてあげたいけど…こればっかりは二人で乗り越えるしかないのよね…。)

苦しんでいる親友の二人を思うと、やるせなさだけがマユの胸に込み上げた。

(とりあえず私ができることをやるしかない。それが少しでも二人の助けになるなら…。)

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