結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
ユウと暮らし始めた頃から笑顔が増え幸せそうにしていた娘を、リサは微笑ましく見ていた。

このまま二人で幸せになってくれたらと、いつか二人の結婚式のドレスやタキシードも自分がデザインして…二人に子供ができたらその子のためにベビー服を作って…と、リサもまた娘の幸せな未来と、その大切な家族が増えることを夢見ていた。


「どこか行く宛てでもあるの?」

レナは静かに首を横に振る。

「バカね、遠慮なんかしなくていいのに…。私たち、親子でしょ?こんな時くらい、母親を頼りなさい。」

「うん…。」

リサはレナの頭を撫でると、静かに微笑んだ。

「私は何があっても、レナの母親だからね。」

「うん…。」

レナは涙を流しながら、何度もうなずく。

ずっと仕事で多忙だったリサを気遣い遠慮して、レナはリサに甘えたことなどなかった。

レナは、リサの何気ない優しさや温かさに包まれているような気がした。

何も言わずとも、娘の様子を見て気持ちを察してくれるリサは、今までも、きっとこうして見守っていてくれたのだと思うと、ユウと別れて冷えきっていたはずのレナの胸は、じわりと温かくなった。


その晩レナは、リサの運転する車でリサの住むマンションに連れて行かれた。

久し振りにリサと二人でキッチンに立ち、一緒に料理を作り、食卓を囲んだ。


「レナ、お風呂に入ってらっしゃい。」

夕食を済ませると、リサはレナにお風呂をすすめ、キッチンで後片付けを始めた。
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