結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
ユウはため息をついて、小川を渡ろうとゆっくりと歩く。

「まだ早いよ、ユウ!!」

「こっち来るのはもっとじいさんになってからだろ!!」

「え?迎えに来たんじゃねぇのかよ?」

小川を渡ることを止める二人の顔を、ユウは不思議そうに見つめる。

「まだ思い残すこといっぱいあるでしょ?」

「そうだぞ!!未練がましく一人で悶々としてたら成仏できねぇぞ!」

「うるせぇオヤジ!!」

「ユウには、大事な人がいるでしょ。」

「うん…。」

「だったら素直にそう言え!!」

「なんだよ、オレとおふくろ置いてさっさと死んだくせに!!」

「だから言ってんだよ!!オマエ、死ぬな!!生きてあの子を幸せにしてやれ!!」

「そうだよ、ユウ。死んだら、大切な人に2度と会えないんだ。後悔してるなら、僕の分までレナを愛して幸せにしてやってくれないか?」

「でももう…オレにはそんな資格なんて…。」

ユウがうつむくとユウの父親は大声で笑った。

「本当にバカだな!!そんなに言うなら、その目をしっかり開いて、よく見てみろ!このバカ息子!!」

「わかってるからバカバカ言うなよ、くそオヤジ!!」

ユウが大声で言い返すと、ユウの父親は嬉しそうに笑った。

「あの時赤ん坊だったオマエと、まさかこんな所でケンカできるなんてな!!次に会うときは、ジジィになってからにしろよ!!ちゃんと生きて、大切な人を守って、幸せにしてからだ!!」

「偉そうに言うな!!わかったよ、やってやるよ!!オレはこんな所で死んだりしねぇ!!」

「そうだよ、ユウ。その意気で、レナの元に戻ってやってよ。ユウがいなくなると、レナは泣いちゃうからね。」

「うん…。」

「じゃあな!!バカ息子!!しっかりやれよ!!」

「うるせぇくそオヤジ!!言われなくてもわかってるっつうの!!」

「じゃあね、ユウ。レナのこと、頼んだよ。」

「わかりました!!」

ユウがケンに力強くうなずくと、二人の父親たちは満足げに笑って手を振る。

(帰ろう…レナのいる場所へ…!!)

ユウは元来た道を引き返す。


(レナ…もう一度、オレを信じてくれる?)


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