結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
トントンと病室のドアをノックする音が響くと、病室のドアを開けてレナが笑顔を覗かせた。

「ユウ。」

「レナ。」

ユウはレナの顔を見た途端に満面の笑みを浮かべた。

タクミがそんなユウのことを見ながらニヤニヤしている。

(嬉しそうな顔しちゃって…ホント、ユウわかりやすすぎ。)

そんなタクミの視線に気付いたユウは、わざとらしくムッとする。

「なんだよ…。」

「ん?何も。」

レナはトートバッグの中からユウの着替えを取り出すと、手際よくロッカーの中にしまう。

「着替え入れといたよ。洗濯物はこれだけ?」

「うん。」

洗濯物をトートバッグにしまうレナを見ながら、タクミが笑みを浮かべて何気なく言う。

「あーちゃん、奥さんみたい。」

“奥さん”と言う言葉に、レナは少し照れ臭そうに笑った。

「そんなたいしたことしてないよ。」

「じゃあ、お母さんだ。」

タクミの言葉に、ユウは思わず呟く。

「それは違う。」

「何?」

「レナをそんなふうに思ったことは1度もない。」

(ユウ…。)

「あーちゃん、この間着てたドレスって、もしかしてウエディングドレス?」

「あ、うん。ブライダルファッションショーに出ることになったの。衣装あわせしてる時にタクミくんから連絡もらって、慌ててそのまま来ちゃったから…。今思うと恥ずかしい…。」

「すごくキレイだったよ?」

「…ありがと…。」

レナのウエディングドレス姿を褒めるタクミに、ユウは軽い嫉妬を覚えた。

「あんなキレイな花嫁さん、見たことないよ。あーちゃん、オレの結婚式で、あのドレス来て隣歩いてくれる?」

「えぇっ?!」

唐突なタクミの言葉に、レナは驚いて目を丸くする。

「それはさすがに…。」

「ダメ?」

「うん…。」

レナは立ち上がって、その場から逃げるようにドアに向かう。

「あの、私、コーヒーでも買って来るね。」

レナが慌ててその場を去ると、ユウがタクミを睨みつけた。

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