結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
「どういうつもりだ?」

タクミは悪びれた様子もなく笑って、挑発的な目でユウを見据える。

「どういうって…言った通りだけど?」

「オマエ…!!」

「ユウにその気がないなら、オレがあーちゃんをお嫁さんにもらっちゃおうかなーって。」

「ケンカ売ってるのか?」

ユウはタクミを睨みながら低い声で呟く。

「さぁ?なんのこと?だって二人は恋人同士ってだけで結婚してる訳でもないし、オレにもまだチャンスはあるでしょ?」

「それは絶対許さない。」

「そう?でもユウがなんて言ったって、どっちを選ぶかはあーちゃんが決めることだよ?」

「………。」


確かに、レナと結婚の約束を交わしたことは1度もない。

でも、絶対に、レナを誰にも渡したくない。

いつかレナがウエディングドレスを来て笑うのは、自分の隣であって欲しい。


(えっ…?オレ、今…。)


ユウは自分の気持ちに戸惑った。

結婚したいと思ったことなど1度もなかった。

ただレナとずっと一緒にいられればそれだけでいいと思っていた。

(オレ、今…レナをお嫁さんにしたいと思ってた?!)

ユウは初めて湧き起こる感情に戸惑いながら、視線をさまよわせる。

(結婚って…なんだろう?)



レナがコーヒーを買って病室に戻ると、なんとなくユウとタクミの間に不穏な空気を感じた。

(どうしたのかな?)

レナはコーヒーをユウとタクミに手渡し、イスに座ってタブを開ける。

「じゃあ、オレ、そろそろ行くわ。あーちゃん、コーヒーいただいてくね。」

「うん。」

タクミが病室を後にすると、ユウはレナを手招きする。

「ん?」

「こっち、来て。」

レナがコーヒーを台の上に置いてそばに行くと、ユウは左手でレナを抱き寄せた。

「ユウ…どうしたの?」

「うん…。」

ユウは何も言わず、ただレナを抱きしめる。

「レナは、ずっと…オレのそばにいてくれるよな?」

その少し弱気な言葉に、レナはさっきのタクミの言葉に不安になったのだと思い、ユウの体を優しく抱きしめた。

「当たり前でしょ?私にはユウしか考えられないもん。私が好きなのは、ユウだけだよ。」

「うん…。」

ユウはレナの顎に左手を添えると、いつもより少し強引に唇を重ねた。

(レナは、絶対に誰にも渡さない…。)


< 61 / 164 >

この作品をシェア

pagetop