結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
そして遂に、ブライダルファッションショーの日がやって来た。

ショーに出るためのレッスンを受け、準備万端のはずだが、レナは初めて大勢の人の前に立つことの不安を拭い切れずにいた。

(大丈夫…大丈夫…。)

何度も自分にそう言い聞かせながら、レナは慌ただしくスタッフが出入りする控え室で自分の出番を待つ。

今までこのような場に出たことのなかった自分がショーに出るとなれば、おそらく一連の騒動のことを取材しようと報道陣が色めきたっていることだろう。

(大丈夫…。私は、ユウといることに、やましいことなんてひとつもない。何を言われても、何を聞かれても、絶対に逃げたりしない…!!)

そしてとうとう、レナの出番がやって来た。

(今の私にできることをするだけ…!)


レナは小刻みに震える手でブーケを持つと、大きく深呼吸して、スポットライトの眩しく当たるステージへと足を踏み出した。

ゆっくりとランウェイを歩くウエディングドレス姿のレナの美しさに、誰もが息を飲む。

「キレイ…!!」

「ホント、素敵…!!」

いつか愛する人の隣でウエディングドレスを着て歩くことを夢見る観客の女性たちの、うっとりとした声がレナの耳に届く。

レナは客席に向かってニッコリと微笑んだ。

(私も、いつかは…ユウのために、ウエディングドレスを着られたらな…。)

今まで起こったユウとの様々なできごとがレナの脳裏によみがえり、いつしかレナは涙を流していた。

(リサ…。ユウのためにウエディングドレスを着ることはないかも知れないけど…ユウがずっとそばにいてくれることが、私の一番の幸せだよ…。)

レナは、愛しいユウと温かなリサの笑顔を思い浮かべると、涙を流しながら幸せそうに微笑んだ。

レナが静かにランウェイを去る頃、観客の女性たちも同じように目に涙を浮かべていた。

(私の気持ち…リサに伝わったかな…?)




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