結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
ショーが終わると、案の定たくさんの報道陣がレナを取材しようと待ち構えていた。

表向きはブライダル業界に初めて進出する`アナスタシア´向けの取材だったが、そこには明らかに違う思惑を持った報道陣が詰め掛けていた。

レナはウエディングドレス姿で報道陣の前に立つと、ニッコリと微笑んだ。

「アリシアさん、今回初めてこのようなショーに出演されましたが、無事に終わられた感想はいかがですか?」

最初の質問はショーに関連する内容だったことに、レナはホッとした。

「とても緊張しました…。母の作ったドレスをたくさんの人に見ていただけて、嬉しく思います。」

レナは緊張の面持ちで答える。

「このウエディングドレスを着た姿を、見てもらいたい方がいらっしゃいますよね?」

(遠回しに来た…!)

「今回は、幼い頃から私のために洋服を作ってくれた母に見てもらいたいと思って、思いきって出演させていただきました。」

レナが答えると、報道陣の質問は次第にヒートアップしていく。

「そろそろ私生活でも、ウエディングドレスを着るご予定があるんじゃないですか?」

「いえ…今のところはありません。」

「もしウエディングドレスを着られるとすれば、お噂になっているお相手、どちらの隣で着たいですか?」

(来た…!)

関係者がショーに関係のない質問を止めようとした時、レナはそれを手で制した。

「世間では私のことがいろいろと記事になったりしているようですが、身に覚えのないことが多すぎて…。私にはやましいことは何もありませんから、嘘を言うつもりもありませんし逃げも隠れもしません。曖昧に言葉を濁すのはかえって誤解を招くので、ハッキリ聞いていただいて結構ですよ?」

レナが堂々とした態度でそう言うと、報道陣からは質問が矢継ぎ早に飛んだ。


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