結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
レナは華奢なその腕で、震えるユウの体を包むように優しく抱きしめた。

そして、広いユウの背中を、トントンと優しく叩く。

「母親に捨てられたって知ってから、実の母親にも必要とされなかったオレなんか、生まれて来ちゃいけなかったのかも知れないって、ずっと思って…。オレがいなければ、おふくろだってあんなに苦労する必要もなくて、もっと普通に結婚して子供を産んで…もっと普通の幸せな家庭を築けてたと思う。こんなどうしようもないオレといても…、レナは幸せになれないかも知れない…。レナにはオレなんかより…もっと…。」

黙ってユウを抱きしめながら話を聞いていたレナが、突然両手でユウの頬をギュッと挟んだ。

「ユウのバカ。」

「え…。」

ユウは驚いて、レナの目を見つめる。

「私の幸せは私が決める。私はユウのそばにいられることが私にとって一番の幸せだと思ってる。ユウは…私に、ユウじゃない他の誰かを選んで欲しいの?」

ユウは目を伏せると静かに首を横に振る。

「それは…絶対に、嫌だ…。」

ユウが呟くと、レナは優しく微笑んだ。

「それにね、ユウ…。生まれて来ちゃいけない子供なんて、一人もいないよ。少なくとも私にはユウが必要。ユウにとっては直子さんじゃない別の人がお母さんだったのはつらいことだと思うけど…私は、ユウの本当のお母さんに感謝してる。」

「えっ?」

「だって、ユウを産んでくれたのはお母さんだよ。お母さんがユウを産んでくれなかったら、私はユウと出会えなかった。確かに生まれたばかりのユウを置いて出て行ったのは良くないけど…その時のお母さんの気持ちは、誰にもわからないじゃない。連れて行きたくても連れて行けなかったのかも知れないし…。でもね、そのおかげで…って言うのもおかしいけど、ユウは直子さんに愛されて大切に育ててもらえたんだよ?私もリサも、直子さんと出会えた。私たち親子、いつも直子さんに助けてもらったし…私は直子さんに、娘みたいに可愛がってもらって、早くに父親亡くしたけど、母親が二人いるみたいって思ったら嬉しかったよ。」

「レナ…。」




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