結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
「そういうもんですか?」

「まぁな…。誰だって歳はとる。10年後、20年後、その先もずっと、見た目も中身も今のままでいられる訳じゃない。不思議とな、結婚すると一緒に歳を重ねて行くほどお互いしっくりくると言うか…一緒に歳とって変わっていく自分達の未来を想像できたりもするんだ。」

「…それって一緒に暮らしてるだけじゃわからないものですかね…。」

「そうだな。責任が違うだろ。」

「責任…。」

「その人の人生を背負う責任だな。この人を一生守って幸せにするんだって覚悟が違う。」

「…。」

「男になれよ、ユウ。あの子を誰よりも幸せにしてやれ。」

「…ハイ。」



事務所から帰ると、ユウはソファーにごろりと体を横たえ、さっき社長に言われたことを思い出していた。

「結婚、か…。」


最近、結婚を意識することがやけに多い。

今まで考えたこともなかった結婚についての疑問があれこれとユウの頭を駆け巡る。

結婚は人生の墓場だと言う人がいれば、結婚は紙切れ1枚、などと言う人もいる。

お見合いで初めて出会った人と生涯添い遂げる人もいれば、大恋愛の末に結婚したのに浮気をしたり離婚したりする人もいる。

離婚までは行かなくても、何十年も一緒にいてお互いを煙たがりながらも生活のために結婚生活を続ける人や、別れたくても子供のために別れられなくて別居する人もいる。

シンヤとマユは結婚していても別々に暮らしているが、お互いを想い合っている。

自分とレナは結婚していなくても一緒に暮らしている。

一緒に歳を重ねて行くほどしっくりくる、と社長は言っていた。

それは結婚しないとわからないものらしい。

レナの人生を一生背負う責任と、レナを一生守って幸せにすると言う覚悟。

レナを守りたい、幸せにしたいと言う気持ちはずっと心にあるけれど、それを覚悟と呼べるだろうか?

今の自分に、レナの人生を背負いきれるだろうか?

(そこで迷って不安になってる時点で完全アウトだよな…情けないけど…。)

レナとずっと一緒にいたいと言う気持ちはあっても、今のユウの頭の中では、その気持ちが直接結婚に結び付かない。

(結局…結婚ってなんだ?)


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