結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
レナが昔よく言っていた“恋の定義がわからない”と言う言葉を思い出す。

(二人で、お互いの恋の定義は何?って話したっけ…。あの時…“オレにとっての恋の定義は、いつも、ずっと、誰よりも強くレナを想うこと”って、オレ、言ったよな…。)

ユウはソファーから起き上がり、タバコに火をつけた。

ゆっくりと煙を吐きながら、あの時のレナの言葉を思い出す。

(“私の恋の定義はユウだよ”って…“ユウと過ごす時間すべて、今までも、これからも”って…言ってくれたんだよな…。)

それなら、レナにとって結婚の定義とはなんだろう?

自分にとっての結婚の定義とはなんだろう?

(恋の定義と結婚の定義は違うのかな?)

もしも結婚するとしたら、相手はレナしか考えられない。

ウェディングドレスを着て微笑むレナを見た時、いつかレナに自分の隣でウェディングドレスを着て笑って欲しいと思った。

タクミがレナに、“オレの結婚式であのウェディングドレスを着て隣を歩いてくれる?”と言った時、ユウは激しく嫉妬して、それは絶対に許さない、と言った。

レナは誰にも渡さない、と強く思った。

結婚は、ただウェディングドレスを着るだけじゃない。

そんなの結婚なんかしていなくても誰にだってできる。

実際、レナはウェディングドレスを着てショーに出たのだ。

でもそれはユウのためではなく、`アナスタシア´のためでもなく、母親であるリサのためだと言っていた。

(レナ…オレに気を遣ってる?レナの口から、結婚したいとか一度も聞いたことない…。)

レナが須藤と結婚すると言った時、確か“私ももう、いい歳だし”と言っていた。

(それが結婚を決める理由になるくらい、女は歳も気になるんだな…。)

春になれば、自分もレナも30歳になる。

(レナもやっぱり、20代のうちに結婚したい、とか思ったりするのかな?)

レナは結婚について、どう考えているだろう?

ユウとの結婚を夢見たり、二人の結婚生活を想像したりするのだろうか?

(そればっかりは、レナに聞いてみないとわからないんだよな…。)

どんなに考えても答えは出ない。

自問自答の堂々巡りに疲れたユウは、大きなため息をついた。

(ダメだ…さっぱりわからない…。)



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