結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
数日後。

ユウと仕事が休みだったレナは、久し振りに二人そろって買い物に出掛けることにした。

レナの運転で大型のショッピングモールに足を運んだ。

駐車場で車を停めると、二人は並んで手を繋ぎ、指を絡めて歩き出す。

「こうして歩くの、久し振りだな。」

「うん。」

レナが嬉しそうに笑ってうなずく。

「疲れたら無理しないで言ってね。まだあんまり長い時間歩くのつらいでしょ?」

「わかった、そうするよ。」

(レナ嬉しそうに笑って、ホントかわいいなぁ。その上ちゃんとオレの体を気遣ってくれて…。入院中も退院してからも、甲斐甲斐しく身の回りの世話とかしてくれて…健気と言うか、なんと言うか…いい奥さんになりそうだな…。)

ユウは自分の考えにハッとすると、照れて赤くなってしまう。

(いい奥さんって…。)

「ん?どうかした?」

「いや、なんでもない。」

「そう?」

ユウは照れ臭さをごまかすようにレナに話し掛ける。

「レナがこういうところに来るの珍しいな。何か買いたい物でもあるの?」

「うん。食料品とか日用品とか衣類とか、いろいろな買い物が1ヶ所で済んで便利だって言うのもあるんだけど、急激に寒くなったからリビングにこたつとかあるといいなって思って。」

「あぁそっか。レナと暮らし始めたのは春先だったもんな。あの部屋で初めての冬だ。」

「うん。どうかな?リビングにこたつ。」

「いいんじゃない?でも動けなくなりそう。」

「それは言えてる。でも、ユウと二人でのんびりこたつに入って寛ぐのもいいなぁって。」

「うん、すごくいい。」


気が付くと12月に入り、ユウがしばらく入院している間に季節は冬へと移り変わっていた。

二人で季節が移り変わって行くのを感じたり、一緒に暮らす部屋の模様替えを二人で考えたり…レナと過ごすなにげない日常のなんでもない一時が、ユウにとっては掛け替えのないことに思えた。

(いいなぁ、こういうの…。ささやかな幸せって言うのかなぁ…。これってもしかして、一緒にいるのがレナだからそう思えるのかな?)

< 76 / 164 >

この作品をシェア

pagetop