結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
二人そろって歩いていると、周りの買い物客からたくさんの視線を感じた。

それでもユウは、あえてレナの手を離したり、人の目から逃れようとはしなかった。

(オレはもう逃げない。レナがあんなに堂々とオレのことを愛してるって言ってくれたんだから、オレもそれに応えないと。)

「なんか、照れ臭いね。」

レナが恥ずかしそうに呟く。

「うん…でもオレは、これからもずっと、レナとこうして歩きたい。」

ユウの言葉に、レナは嬉しそうに笑った。

「うん…私も。」

買い物客の若い女性たちが、にこやかに笑ってレナに手を振る。

レナは照れ臭そうにはにかんで、ペコリと頭を下げた。

ユウはそんなレナを優しく微笑んで見つめている。

「アリシア、すごいキレイだった!」

「ユウもかっこいい!!お似合いの二人って感じだったね!羨ましい!!」

通り過ぎる時に、興奮気味に話す女性たちの声が聞こえると、ユウとレナは顔を見合わせて照れ笑いを浮かべた。

「オレたち、お似合いなんだって。」

「私たちのこと、羨ましいだって。」

二人の関係を、少しは世間に認めてもらえるようになったのだろうか?

レナさえいればいいと思っていたはずなのに、見ず知らずの人たちから温かい声を掛けられるたびに、ユウはなんとも言えない気持ちになった。

嬉しいような、誇らしいような。

過去の女性遍歴を週刊誌で取り沙汰された時にはあんなにもマスコミから叩かれ冷たく罵られていたはずなのに、レナがインタビューで話したことや、その後マユの勤める出版社の発行する週刊誌に二人の記事が載ったことで、二人へ向けられる周囲の目や世間の声が優しく好意的になった。

騒動の渦中にいた時、ユウはただ後悔するばかりで塞ぎ込んで、自分の力でなんとかしようと思わなかった。

もうこのまま、レナともバンドのみんなとも、元のようには戻れないのかも知れないと何度も思った。

(結局オレは、いつもレナに救われてる…。シンちゃんや佐伯にも、バンドのみんなにも…たくさんの人に助けられてる…。)

もし自分にとって大切な人たちが困ったり苦しんだりしている時には、自分がそうしてもらったように、力になりたいとユウは思った。



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