結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
「お兄ちゃん。」

ユイがユウの服の裾をツンツンと引っ張る。

「ん?何、ユイちゃん。」

ユウが身をかがめると、ユイはユウの耳元で内緒話をするように小さな声で言う。

「お兄ちゃんとアリシアちゃんの結婚式には、ユイもよんでね。ユイ、もう一度真っ白いドレス着たアリシアちゃんが見たいの。」

「あ…うん…。」

ユウが返事をするとユイは満足げに笑った。

「あなた、そろそろ…。」

「あ、そうだな。この後、嫁さんの両親と約束してんだ。またゆっくり会おうぜ。高校の同級生、上京組が何人かいるんだ。みんなで同窓会でもしないか?」

「そうだな。」

ユウとサトシはスマホを出して連絡先を交換し、レナはアイを奥さんの手にそっと返した。

「ありがとうございました。良かったねぇ、だっこしてもらって。」

奥さんの幸せそうな笑顔を見て、レナも穏やかに微笑んだ。

ユイが嬉しそうに笑ってレナの手を握る。

「アリシアちゃん。ユイ、アリシアちゃん大好きなの。」

「ホント?嬉しいな。」

「今度、うちに遊びに来てね。ユイ、来年1年生になるの。これから、じーじとばーばと一緒に、ランドセル買いに行くんだ。今度、見せてあげるね。」

「ありがとう。それじゃあ、カメラ持って遊びに行くね。お姉ちゃん、カメラマンなの。ユイちゃんの写真、撮ってあげるね。」

「約束だよ!!」

「うん。約束ね。」

ユイが小さな小指を差し出すと、レナはそっと小指を絡め、指切りをした。

「良かったな、ユイ。高梨、ありがとな。ホントに今度、ユウと二人で遊びに来てやって。」

「うん。」

ユウとレナは、サトシたちと手を振って別れると、その姿が見えなくなった途端に顔を見合わせた。

「かわいかったね。」

「そうだな。しかしサトシのヤツ、あんな大きな子がいるとはビックリしたな…。」

小さな子達に優しく微笑むレナは、とてもキレイだった。

(いつかオレたちにも、あんなふうに家族ができるのかな…。)

ユウは不意に自分の考えたことに、また照れて咳払いをした。

「さ、行こうか。次はどこ行く?」

「夕食の材料買って帰ろ。何食べたい?」

「そうだなぁ…。」

二人はまた手を繋ぎ、指を絡めて歩き出した。



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