結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
買い物を終え帰宅すると、ユウはキッチンに立つレナの後ろ姿を見ながら考える。

(結婚式にはよんでね、かぁ…。サトシ、結婚なんて勢いとタイミングとか言ってたな…。)

自分とレナに、そのタイミングはいつ来るのだろう?

(サトシ、幸せそうだったな…。アイツはあの背中に、奥さんと子供二人の人生を背負って生きてんだな…。)

幸せそうなサトシたちを見て、自分たちにもいつか家族ができるのかな、と思った。

(これって…。)

ユウの胸がまた、キュッと音を立てる。

いつの間にか、今とは違うレナとの未来を想像している自分がいることに、ユウは気付いた。

(オレ…いつの間にか、レナとの結婚考えてる…。でも、レナはなんて言うだろう?)



夕食が終わり入浴を済ませると、ユウはリビングのソファーでビールを飲んでいた。

レナとの結婚に傾きかけた自分の気持ちに戸惑うばかりで、レナの気持ちを聞くのも怖い気がした。

夕食の後片付けを終えたレナが、ビールを持ってユウの隣に座ると、ユウはレナの体を抱き寄せた。

「ユウ?」

不思議そうにユウの顔を覗き込むレナの唇を、少し強引に自分の唇で塞いだ。

ユウは何度も何度も、キスを繰り返す。

いつもより少し強引で長いユウのキスに、レナはユウが何か不安に思っているのかと考える。

長い長いキスが終わると、レナはユウの肩に寄りかかり、静かに呟いた。

「ユウ…何か悩んでる?」

「えっ?」

突然のレナの言葉に、ユウは驚いた。

「何か、不安なことでもあるの?」

(なんでわかるんだろ…。)

驚きを隠せないユウの顔を見て、レナは柔らかく微笑んだ。

「今、なんでわかるんだ、って思ったでしょ?」

「…うん…。」

レナはふふっと小さく笑った。

「わかるよ…。ユウのことなら…。」

「うん…。」

ユウがうなずくと、レナはそっとユウの顔を見上げた。

「一人で悩むくらいなら、ちゃんと私に話してね。」

「うん…。」

ユウはレナの肩をギュッと抱きしめる。

(聞いても、いいのかな…。)

「ん?」

レナは尋ねるような目でユウを見る。

ユウはもう一度レナに軽くキスをすると、静かに呟いた。

「レナは…どう思ってんのかな、って…。」

「何が?」

ユウは思いきって言葉を絞り出す。

「オレとの……結婚……。」

「え……。」

突然のユウの結婚と言う言葉に、レナは驚いて言葉をなくした。



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