結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
数日後、レナはマユの家に遊びに来ていた。

珍しく仕事が早く終わったマユが、会わないかとレナに連絡してきたのだ。

レナもまた、その日の仕事は事務所での簡単な作業だけだったので、早めに事務所を出ることができた。

マユの家に着くと二人は帰り際に買ったケーキと紅茶で、お茶の時間を楽しむ。

「レナと会うの、久し振りだよね。それで、その後どう?」

「うん。お陰さまで。」

「うまくいってるなら良かった。」

レナは紅茶を一口飲むと、マユに尋ねる。

「週刊誌のあの記事…マユだよね?」

「なんのこと?」

「しらばっくれてもダメ。あんな昔の、しかもかなり突っ込んだ内容の話、知ってる人なんてマユしかいないもん。」

「バレた?」

「バレるよ。なんかすごく恥ずかしかった…けど、ありがとね。」

マユはニコリと笑ってケーキを口に運ぶ。

「あのアヤって子の記事もマユが調べたの?」

「いや、私はネタを提供しただけ。同僚があの週刊誌の編集部にいてね。調べあげるのはプロに任せたんだけど…私が思っていた以上の情報が出てきて驚いた。」

「あのアヤって子…ユウのこと、好きだったのかな?」

「そんな純粋な気持ちじゃないって。」

レナは紅茶を一口飲むと少し複雑そうな顔をする。

「どうしたの?」

「うん…。あの子…この先どうなるのかなって。あれだけバッシングされたら、もう表に出てくるのは難しいんじゃないかと思って。」

「アンタどんだけお人好しなの。」

マユはおかしそうに笑う。

「でも、それがレナのいいところね。」

「そんなことないよ。確かにあの子の出した記事のせいで、ユウが苦しんだのは事実だし…私もいろいろ書かれて嫌な思いはしたけど、マスコミの怖さも、マスコミの流した情報で変わる世間の目の怖さも、わかったからね。ちょっと気になったの。」

「そうね。いろいろあったもんね。」

「うん。でも今は、それも無駄なことじゃなかったのかなって思ってるよ。つらかったけど、私もユウも、今までは勝ち目がないからって思い込んで、見て見ぬフリして立ち向かわないようにしてきた大きな壁を、乗り越えることができた気がする。」

マユはカップの紅茶を飲みながら、レナに視線を向ける。




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