結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
「ん?」

「なんかあった?」

「えっ?!」

鋭いマユの指摘に、レナは慌てふためいた。

「私は幸せですって、顔に書いてある。」

レナは真っ赤になって、思わず両手で頬を押さえた。

「うん…。ユウがね…だんだん、自分の気持ちを私に話してくれるようになったし、私もユウが何か悩んでる時、少しわかるようになってきた…。それに…。」

「それに?」

マユに促され、レナは恥ずかしそうに、ゆっくりと口を開く。

「ユウに…プロポーズされた…。」

「ホント?!」

「うん…。」

「良かったじゃない!!」

「うん…。嬉しかったよ…。」

マユは自分のことのように喜んでいる。

「プロポーズの言葉とか教えてよー。」

「普通だと思うけど…内緒。」

「えーっ、なんでー?!」

「人に教えるのもったいないから。誰にも内緒。私とユウだけの大事な思い出にするの。」

幸せそうに笑うレナを見て、マユはため息をついた。

「幸せそうな顔しちゃって…。レナも片桐にだけは超甘いもんね。」

「そうかな?」

「二人とも無自覚だもんねぇ…。」

マユがやれやれと言うように肩をすくめた。

「で、いつなの?挙式とか入籍とか。」

「それはまだ、何も決まってない。」

「なーんだ。決まったら早めに教えてよ。」

「うん。」

マユは残りの紅茶を飲み干すと、ポットからカップに紅茶のおかわりを注ぐ。

「ねぇマユ、せっかく仕事が早く終わったのに三浦くんと一緒にいなくていいの?」

レナがなにげなく尋ねるとマユは少し複雑そうな表情で小さくため息をつく。

「うん…。いいの。」

「どうかした?」

「うん…私ね、シンヤと…離婚、するんだ。」

「えっ?!どういうこと?何があったの?!」

レナはマユの肩を掴んで揺する。

しかしマユはなかなか話そうとしない。

「ねぇ、マユ。私がつらかった時、マユ、いつも話を聞いてくれたよね。この間だって、泣きたい時は泣いてもいいって言ってくれたよね。マユが悩んだりつらい思いをしてるときには、私は何もできないの?」

「レナ…。」

「確かに私には話を聞く以外、何もできないかも知れないけど…私はマユのつらさを少しでもわかりたいと思う。」

マユはレナの手を握りうつむいた。


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