結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
そしてユウは気になっていたことをシンヤに聞いてみることにした。

「ところでさ…婚約指輪って、やっぱり渡すべきだよね?」

「そうだなぁ。贈れば喜ぶと思うけど、正直どっちでもいいんじゃね?婚約指輪なんて無駄に高い金払って買ったところで、結婚したらだいたいは箱ん中に眠ってるよ。」

「そうなのか?!」

(それはかなりショックかも…。)

「うちはマユが、婚約指輪は要らないって。どうせならずっと使えるように、別の物にしてって言われてさ、ダイヤのネックレスにした。」

「へぇ…堅実だなぁ。」

「いい奥さんだろ?」

「そうだね。」

「指輪はさ、ユウの気持ち次第だよ。レナちゃんと相談して一緒に選びに行くのもアリだし、サイズさえ間違わなければサプライズで渡すのもアリだし。」

「うん。」

「結婚にはさ、それぞれのカタチがあると思うんだ。それを二人で一緒に作って行けばいいんじゃないか。」

「うん…。シンちゃん、さすが作家だね。それらしいこと言うんだ。」

「オマエなぁ…。そんなこと言うと、ユウとレナちゃんの恋の軌跡をノンフィクションで書くけど。絶対売れるよなぁ。ベストセラー間違いなしだ。よし、担当さんに連絡を…。」

「シンヤ先生スミマセンでした。それだけは勘弁して下さい…。」

「どうすっかな?」

「マジで勘弁して、シンちゃん…。」

「オレたち夫婦を敵に回すとこわいぞ?」

「味方につけると強いんだけどな…。」

心強い親友の笑顔が、以前よりも柔らかく穏やかになっている気がしてユウはホッとした。

(良かった。シンちゃん、幸せそうだ…。)



その日の夕食の時間。

ユウはレナの作った料理を口に運びながら、昼間にシンヤと話したことを考える。

真剣に考え事をしているユウの様子が気にかかり、料理の味に問題があったのかと気になったレナがユウの顔を見ながら尋ねる。

「ユウ、どうかした?口に合わない?」

レナの言葉にハッとしたユウは慌てて首を横に振る。

「全然、そんなことない。すごくうまいよ。」

「ホント?それならいいんだけど。」

ユウは味噌汁を飲みながら、まずは何から話し合えばいいのかと考える。

「あのさ、レナ。」

(やっぱり、親に挨拶からかな…。)

「ん、何?」

「リサさんに、挨拶に行こうかなって思うんだけど…。その、結婚の…。」

「あ…うん…。」

レナは少し照れ臭そうに返事をすると、落ち着かない様子でお茶を飲み込んだ。

「予定、聞いといてくれる?できるだけ合わせるようにするから。」

「うん。」

「あと、いろいろ…式のこととか…そろそろ、考えて行こうか。」

レナは嬉しそうに笑った。

「うん…。」


< 98 / 164 >

この作品をシェア

pagetop