その瞳に映りませんように
0.3
「ハシノー! 土曜見に行く映画だけどさー。どれがいいー?」
「えーとー。あ、これ面白そうー。体にモンスターが住み着いちゃうやつ」
「えー? グロそうじゃんー。うちこっちがいい。原作もめちゃくちゃ面白いしー」
「あたしもそれがいいー。ハシノどーするー?」
「あ、あはは! 私それも見たいって思ってたんだよねー」
「んじゃ、決まりー! チケ予約しとくわー」
友達が教室中に響く大声でそう言う。
それに伴い、近くにいた男子たちが、
「あ、俺たちもそれ見たいって話してたんだけど」
と食いついてきた。
「えーこれ女の子が見るやつだよー」
「いーじゃんこの女優マジ可愛いんだもーん」
私が教室でつるんでいる女子たちは、キラキラしていて、イケメン好きで、みんなで一緒に行動したがる。
ノリが良くて、毎日ゲラゲラ笑っていられるので、楽しいっちゃ楽しい。
それにしても、見に行くのはベタベタの恋愛ものか。
モンスターが体に寄生するやつだって私原作好きだし、見たかったんだけどな。
ま、別にみんなで見ればどれも面白いだろうし、いいんだけど。
土曜日がほんの少しだけ、面倒くさい。
友達との会話に参加しつつも、私は無意識のうちにユズキくんの姿を探していた。
彼は自分の席で仲の良い男女グループとしゃべっている。
冷静に会話にツッコミを添えているようだ。
もちろん、その目はいつも通り。
本気で会話を楽しんでいるのか分からないような、どこか冷めているような。
そんな、彼の目を見ると、少し安心した。