その瞳に映りませんように
ユズキくんとは教室で話す以外にも、ラインでやり取りをすることが多くなった。
『部活疲れたー』と私が送ると、
『俺も疲れたー』と返ってくる。
ちなみに私は吹奏楽部で、彼はバドミントン部。
終わりの時間はだいたい一緒。
一番最後に音楽準備室を出て、鍵を閉める。
薄暗い廊下を1人で歩き、下駄箱前に到着すると、ユズキくんの姿を見つけた。
嬉しい気持ちになった。
「あ、ユズキくんも今帰り?」
「ん。ハシノさんのこと、待ってた」
そう言って、やわらかな流し目で、私に視線をよこすユズキくん。
思わず、私が目を斜め下にそらすと、彼も顔を下に向けたことが分かった。
私はすぐ視線を戻し、浅くまぶたが閉じられた彼の目を見つめた。
私は何をしているんだろう。
彼の優しい目からは逃げて、普段の目を追いかけてしまっている。
もちろん彼が私に心を開いてくれていることは嬉しいんだけど。