その瞳に映りませんように
1.0
屋上は昼休みしか開放されていないはずだけど、
その日は、ありがたいことに鍵が開けっぱなしになっていた。
教室に戻ることができず、広い屋上で1人、ぼーっと空を眺めていた。
雲ひとつない青空なのに、綺麗だとは思えなかった。
今朝測ったら平熱に戻っていたはずなのに、空一面の水色はぐるぐると回っている。
きっと波を発しているのに、透き通りすぎて凹凸がないように見えているだけなのかもしれない。
透明な激しい渦の中に、自分がのまれていたことに、ようやく気がついたように思えた。
って、なーに考えているんだ、自分。
「へっくしゅん!」
あれ? まだ風邪、治りきっていないのかも。
でも日差しがあったかいなぁ。
私は制服のブレザーを脱ぎ、それを自分の上半身にかけて、その場に寝そべった。
本当は、私だってただへらへら笑っていたいわけじゃない。
今の私は、きっとユズキくんと似た目をしているんだと思う。