その瞳に映りませんように
「びっくりした。保健室行ったら来てないって言われてさー」
後ろからユズキくんの声が聞こえたが、
私はその方向を見ることができなかった。
ちなみに先生が私の行方をクラス内で尋ねると、
風邪らしいし保健室でも行ったんだと思いますー、と女子たちが言ったらしい。
誰もいない屋上に2人きり。
気まずさと、ドキドキが交互に押し寄せる。
オレンジ色を帯びていく太陽を眺めていたら、ユズキくんの足音と影が近づいてきた。
そして、私のすぐ隣に彼が腰をおろした、
その瞬間――。
「もう! 病み上がりなんでしょ? ほら、おでこ出して」
突然、彼は私に顔を近づけ、右手を額に当ててきた。
もちろん、至近距離で視線が重なる。
声は必死なんだけど、その目はいつも通り。
本気で私を心配しているのか、仕方なしにここまで来たのか、よく分からない色をしていた。
どくん、どくん、どくん。
どうしよう。
体中が脈を打っているようで、それが額から彼に伝わってしまうのではないかと心配した。
「うーん。熱は大丈夫そうかな。良かった」
その言葉とともに、その目はふわりと細められ、穏やかな光を灯す。
本来のたれ目がちな形状や、その形に合わせて膨らむ涙袋も相まり、
私の心の中が、彼の優しい感情で包まれていくように思えた。
本気で心配してくれていたんだ……。
私は急いで目を下へそらした。