その瞳に映りませんように
「ごめん。心配かけちゃったみたいで」
「もう本当だよー。しかも、この前俺変なこと言っちゃったから、ドン引きされてるって思ってたし」
ユズキくんはいつの間にか夕日を眺めていた。
私は再び彼に視線を戻した。
やはり、その目は美しいオレンジをまとった夕日を、そんなに綺麗なものではないものとして認識しているかのように見える。
その様子をじっと見つめていると、「ん?」と彼は横目で私を見た。
「ユズキくん。あれ、綺麗?」
「あれって?」
「あの夕日」
「綺麗だよ」
「本当?」
「何? 突然。雲もないし、めちゃくちゃ綺麗じゃん」
口ではそう言っているのに、通常通り、まぶたは開ききっていないし、授業中黒板を見るのと変わらないような目をしている。
夕日なんてしょっちゅう見れるでしょ、と何かを諦めているかのような。
「……っ」
本気でそう思ってる? と突っ込みたくなったけど、やめておいた。
すると、彼は何かに気がついたのか、ぐっと私にその目を近づけてきた。
「だーかーら。単に両親の顔ミックスでこの目に生まれただけだし」
そう目の前で囁かれた瞬間、どきっと心臓が高鳴った。
大好きな目を至近距離で見るのは、やっぱり緊張する。