その瞳に映りませんように

「あ、美味しいね。これ限定にするのもったいないってー」


「でしょ! 買いだめしとかないとね~」


ちなみに前回は妹が買ってきたものをこっそり奪って食べたのだが、

それよりも、2人でコンビニ前のベンチで食べている今の方が、チョコの甘さが体の中により溶け込んでいく感覚がした。


しーんとなるのも気まずいかなと思い、妹とのチョコレートウォーズ(要は奪い合いのケンカね)エピソードについて話すと、

彼はまぶたを伏せながら、口元を覆って笑い出した。


あはは、と声は出ているけど、視線を私から逃がしたその目だけは、笑うことをためらっているかのように見えた。



そろそろ帰ろうと思い、2人で立ち上がる。


すると、ユズキくんが口を開いた。


「ハシノさんって面白いよね。話してると俺も楽しくなってくる」


「そ、そう? まあ毎日楽しいしね」


「俺なんて、一緒にいてもつまんなそうな目してる、ってフられたことあるし」


「あらら。そーなんだ。でも私はユズキくんの目、好きだよ」


「…………」


や、やばい! 私の胸に秘めたる想いを言ってしまった!


ユズキくんは黙ってしまい、会話がストップする。


いや、別に愛の告白とかじゃなくて、ほら!

髪型格好いいね、とか、筋肉イカしてんね、とか、そういうのと一緒。一緒!


……たぶん。



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