わたしのイトリくん
久しぶりに見るイトリくんは
以前と何も変わらない。
さらさらとした黒髪。
しかしその表情は、長い前髪で覆われたうえ、
黒縁のメガネをかけているもんだから分かりづらい。
でもすごく動揺しているのが分かった。
感情が溢れそうで、大のオトナなのに泣きそうで、
もう何が何だか訳が分からなくなって、
目の前のイトリくんに抱き付いた。
「このバカイトリ!どこ行ってたのよ!」
口を開けば悪態しかつけない自分がイヤになったが、
今は言いたかったことが言葉にならない。
抱きつかれた反動でよろめいたイトリくんだったが壁に手をつき体制を持ち直す。
「うわ、ヒ、ヒイロさん!!」
そんな慌てている様子の彼を下から見上げる。
「ちょっと...イトリくん痩せすぎじゃない?!」
抱き付いて分かったが、
骨がゴツゴツとしていて、折れてしまいそうで心配になる。