わたしのイトリくん
カフェに着き、辺りを見回すと
すぐに印象の強いオレンジ髮の青年を発見することが出来た。
湊人くんも私に気が付いたようで、
こっちですと手招きをしてくれる。
湊人くんの向かい側に座ると、すぐに店員さんがやってきたのでアイスコーヒーを注文した。
そしてやっと一息つく。
「ごめんなさい、少し待たせちゃったかな?」
「いえいえ!俺、すぐ近くに居たんで!」
湊人くんは少し緊張したような顔をして、
首を横に振る。
「あのなんか、今こういう事言うのあれなんですけど...」
「え?」
指で頬を掻きながら何だか言いにくそうな表情に疑問符を浮かべる。
「イトリから聞いてたヒイロさんと、
昨日と今日会ったヒイロさんの印象がちょっと違くて緊張してまして....」
少し恥ずかしそうに言うもんだから
キョトンとしてしまった。
「あ、もしかして...イトリくんから私のだらしないエピソードとか聞いちゃってる?」
恥ずかしくなって両手で顔を覆う。
イトリくんにはつい甘えすぎて、素を出してしまう
外での自分と家での自分の印象の差が激しいことに改めて気付く。
きっと湊人くんはイトリくんから聞いたそのエピソードと、
今の私の印象が結びつかないのだろう。
「あっ悪い意味で言ったんじゃなくて!
大人の女性だな、と思ったら緊張してしまったんです!どちらも素敵です!!」
必死に焦ったように弁解してくれる姿が面白くてプッと吹き出す。
「緊張させちゃってゴメンね!
普通にしてくれて良いからね」
先ほどまで放心していた心が少し戻ってきたような気がして、自然と顔が綻んだ。
そんなタイミングでアイスコーヒーが運ばれてきて、
真面目な顔をした湊人くんは話を切り出した。