❇︎*黒猫さんに導かれて*❇︎
「“東……君”……」
女子生徒達は頭を悩ませる。
私から見て、東君は格好良く見えた。
女子の好きな顔だと思ったのだが、
私の勘違いだったのだろうか……。
「ーーごめんなさい、先生。
東君という人に、
私達、身に覚えがありません……。」
私の (多分) 初めての質問に対して
女子生徒達は答えられず
申し訳なさそうにする。
沈黙。
理科室の独特な匂いが
空気中に混じりながら、
ニガクルシイ雰囲気を漂わせる。
あまりにも苦しくて、
先生である私も声を出すのが困難であった。
何か言わないと、
何か言わないと、
私は考えても、何も浮かばなくて……
とっさに出た言葉。
「ーーあっ、猫だ。」