明日の僕らは

「……うん。ありがとう。貰っとく」

「うん。お返しはゴディ〇のチョコでいいよ」

「海老で鯛を釣ろうとしてる」

「ふふ、日本語、苦手デース」

「田迎、変わらないね。うん、国語は苦手だった、お互いに」



それでも…、いいかって…思ってしまう。


以前と変わらない笑顔が…そこにあったから。





「……あれ?そういえば」

散々笑って。
突然、ふと、彼女はまた何か思い出したような真剣な顔つきになった。



「ねえ。間宮くんは、何で…ここに居るの?」

るいにここで会って…3回目。

当然の如く、疑問を持たなければならない部分に…

その、奇妙な現実に。

とうとう、気づいた。


「………さあ…。何でだろう」

「…うちらこうして話すのだって…久しぶりだよね」

「うん。まあ、細かいこと気にしなくていいと思う。別に悪いことしてる訳じゃないんだから」

「…二人で会ってると、梅ちゃんが…。あれ?…そうか、そうだ。学校は?」

「自由登校になってる。田迎もそうでしょ」

「……あー…、そっか。そうだった、うんうん。じゃあさ、間宮くん、暇なんだ?」

「……そーかも」

「煮え切らないなあ…。けど、私も暇だったからちょうどよかった」

「ふーん」

「だって、検査して、寝て、起きて、ご飯食べて、テレビ観て…くらいしかしてないもん。多分。」

「……。見舞いとか、けっこう来てんじゃない?」

「うん。……そうだね。そう、だと思う。それと、何でか目が…すぐ疲れて」


そう言えば…、そんな動作が…あった気がした。
じっと…物を見つめてみたり、涙目になったり、片目瞑ってみたり……。


「そうだ。ね、間宮くん。暇な方の間宮くん、ここに残って…私の話し相手になるってどう?」

「……?暇な方の…俺?」

また、何かの思い付き?それにしては、言っていることが変だけど…。


「あれ?言わなかったっけ?」

「……何?」


彼女は…おもむろに、目を閉じて。

それからゆっくりと…左目だけを開く。


「………ここに、間宮くんがいる」

こっちを指差して…、真面目な顔してる。


すると、今度は…両目を開けて。

「こうするとね、間宮くんが…ここにも居るの」

右目と左目の前に、それぞれ…人指し指で印すようにして。

両者、若干上下にズレた高さで…掲げる。


「……どういう…こと?」


「あのね、どっちも本物の間宮くんなんだよね」

「………?」

「私には、間宮くんがハッキリ2人に…見える。まあ、間宮くんだけじゃなくって、視界に映る物全て。対象物が…二重になる。これだと目眩して…ちょっと辛い」

「……何…で?」

「さあ…、事故の後遺症かな?右目瞑った状態だと、1つになるんだけど…距離感が掴めないから不便なんだよね。反対に、左目瞑ると…世界が夕焼け空の下にあるって感じ。暗くて、ちょっと怖い」

「………治る…んだよね?」

「多分?神経は無事らしいし、時間が解決するんじゃない?」


あっけらかんとした…口調。

それでも、そんな…状態で。
全く平気な訳なんて…平気な人なんて、いるはずもない。



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